最近、相続税が払えないけどどうしたら良いか?というご相談を受けることが増えてきております。
相続税法では、原則として申告期限までに相続税を金銭で一括納付することを求めています。
そこで今回は、相続税が払えない場合の対処方法についていくつかご紹介したいと思います。
0.事前の相続対策で納税資金まで含めて計画する。遺産分割協議や遺言書作成時に納税資金を確保する。
1.相続財産を処分して納税資金を確保する。
2.金融機関から借り入れをして納税資金を確保する。
3.延納の規程を利用する。
4.物納の規程を利用する。
相続発生前
0.生前にタックスプランニングをする。
相続税の納税資金の準備は、基本的には生前での相続税対策(タックスプランニング)で対応すべきだと考えております。相続税や相続時の費用に備えて、現金預金などを準備しておくことが重要です。
不動産などの換金性の低い財産が多い場合には、売却できる不動産を選定しておくことや担保として利用できるように条件を整えておくことも視野に入れて備えておくことも重要となります。
また、対策する前に相続が発生した場合には、納税資金として使える現金預金や換金性の高い上場株式などの有価証券を、各相続人が相続税額以上は相続出来ることが望ましいです。
相続発生後
1.相続財産を処分して納税資金を確保する。
上場株式などの換金が容易な資産を相続している場合には、それらの売却などで納税資金を準備することも検討してみましょう。ただし、含み益があって譲渡所得が発生する場合には、下記4.の物納の利用も検討する必要があります。
不動産などの換金が容易でない資産などを多く相続している場合には、売り急ぎにより十分な価格での売却ができないことや、小規模宅地等の特例を適用する場合には、申告期限までの所有を条件とするケースもあるほか、相続税の取得費加算の特例なども使えることもあるため、専門家に相談してから実行することが大切です。
2.金融機関から借り入れをして納税資金を確保する。
相続により取得した財産が、換金が困難な場合や手放したくない場合には、金融機関からの融資を受けてそれにより納税する方法も考えられます。
この方法は、下記3.延納に比べると、金融機関によっては、条件などを柔軟に対応してもらえることや、手続きなどが比較的容易であることがメリットとして上げられます。
3.延納を利用する。
相続税法38条で規定されているとおり、相続税額が10万円を超え、かつ、申告期限までに金銭で納付できない場合には、一定の手続きを行って税務署長の許可を受けることで、最大で5年~20年間(不動産などの割合に応じて、財産ごとに規定されている)での分割納付が可能となります。
ただし、税額が100万円を超える場合や延納機関が3年を超える場合には、担保の提供が必要です。なお、相続財産以外も担保提供可能です(保証人でも認められる場合もあります)。 手続きについては、延納の準備や申請や許可までに時間を要するため、早めに税理士に相談すると良いと思います。
4.物納を利用する。
上記3.延納によっても納付が困難な場合には、税務署長の許可を受けた場合には、物納(相続財産を国に納める)での納税も可能になります。
注意すべきは、相続した財産に限られることや、一定の不動産や上場株式など一定の財産に限られていることのほか、物納に当たられる財産の種類は順位が決められており、原則として上位順位の財産から物納に充てる必要がでてきます。
また、その物納価額は、原則としては相続税の評価額になりますので、市場化価格を下回るケースが多くあります。特に、小規模宅地等の特例を受けた不動産については、特例を受けた後の評価額となるため、非常に評価額が低くなる場合があります。
一方で、含み益を有する財産の場合には、相続税の納付が困難な部分に対する物納分については、譲渡所得は非課税となる。そのため、物納が利用可能な場合には、売却して納付した場合と物納した場合とでどちらが得になるかは検討する必要がある。
まとめ
相続税の納税については、生前中に対策を立てることが一番です。しかし、十分な対策を立てることのできない相続の発生もあると思います。
十分な対策が立てられていない場合には、相続した遺産や相続人が元々持っている財産、相続人がどうしたいかによって納税プランが変わってきます。
納税についても、迷ったらまずは税理士にご相談ください。そこで、忌憚のない要望を話してみると各納税者様に応じた解決策や納税プランを提示してくれると思います。