最近、実家を相続したけれども既に自宅を持っている方や、今の場所で生活の基盤を築いているため実家に戻る予定が無い方から、相続した実家についてのご相談が増えてきています。
そこで今回は、実家を相続する際のポイントや相続した実家の活用時のポイントなどを紹介したいと思います。

実家の相続

亡くなられた方が生前に住んでいた土地・建物を相続する際には、誰が相続するかがとても重要になります。
配偶者や一定の相続人が相続する際には、その土地の相続税の評価額が最大で80%減らすことが出来ます。また、税金の面や長男だからという理由だけではなく、残された相続人の生活や家族構成・将来設計などを鑑みて誰が相続するのが一番良いのかを話し合うことが大切になります。
遠方で生活している相続人や既にマイホームを所有している相続人より、亡くなられた方と生計を一緒にしていた方が相続した方が有効に活用できるケースが多くなっています。

小規模宅地等の特例

配偶者や一定の相続人が相続する際には、その土地の相続税の評価額を最大で80%減らすことが出来ます。
この特例は、相続人ごとに条件が変わり、相続発生前の状況なども条件に加わっているため相続発生前から誰が実家を相続するのかを話し合っておくことが大切になります。また、2024年4月1日から相続登記が義務化されるため、相続税がかからなくても実家を誰が相続するかは話し合っておくと良いと思います。
後々のことを考えるのであれば、共有よりは単独での所有の方が利便性が高いため、場合によっては代償分割も検討すると良いかと思います。

活用のポイント

  • 配偶者が相続する場合には、無条件で利用可能です。
  • 条件を満たせば、遺贈でも利用可能です。
  • 相続前に実家を誰が相続するかを話し合っておくと利用しやすくなります。
  • 代償分割と合わせて利用するとより節税につながる場合があります。
  • 相続税の申告期限までに分割が確定していることが条件の1つとなっておりますが、申告期限までに分割が出来ない場合には、「申告後3年以内の分割見込書」を提出することで、申告後に分割が確定した際に特例が受けれる場合があります。
  • 複数特例を受けれる場合には、他の特例との兼ね合いも考えて適用する土地を選択することが大切です。

注意点

  • 生前贈与の分については、特例は受けれません
  • 配偶者以外の相続人は、相続税の申告期限まで所有することが条件の1つとなります。
    →配偶者以外の相続人が特例を使う場合には、申告期限までは売却NG
  • 配偶者以外の同居親族や生計同一親族については、相続前から相続税の申告期限までの居住が条件の1つとなります。
  • 配偶者や同居親族以外の相続人は、亡くなられた方の相続人に配偶者や同居親族が居ないことなど多くの条件が付されています。
  • 共有の場合には、各人ごとに判定を行い自身の持ち分のみに特例が適用されます。なお、特例の面積上限はそのままです。

実家の活用

実家を相続した後に、そのまま実家に住む場合や当面は住む予定が無い場合など様々だと思います。また、相続した実家に住む予定がない場合や利用する予定が無い場合には処分を検討することも大切です。
不動産は所有しているだけで毎年固定資産税がかかってきますし、建物の場合には維持管理のための費用も多くのお金が必要となります。
そこで、各ケースごとに注意点などをまとめてみました。

マイホームとして利用

建物の経年劣化部分のメンテナンスや破損部分の修理などは、相続前にしておくと相続税が安くなります。ただし、改修工事などの資産価値を高める工事などは、相続税の評価の際に加算する必要がありますのでご注意ください。
また、建物の所有者以外の者が修理代を出した場合には、贈与税が課税されることもあります。

活用のポイント

  • 通常の修理については、相続発生前に行っておくと相続税の節税につながります。
  • 大規模なリフォーム工事などは、固定資産税評価に反映されていない場合には相続税の評価の際に加算する必要があります。

賃貸として利用

既にマイホームを持っていて、実家を賃貸用不動産として運用するケースや、将来帰郷して住むまでは誰かほかの人に貸し出すケースも多くみられます。
賃貸として活用する場合には、税務上いくつか注意する点があります。

注意点

  • 賃貸収入の確定申告が必要になる場合があります。
  • 建物の減価償却費の計上に注意してください。
    →非事業用の資産を事業用の資産に転用した場合には、未償却残高や償却方法などに気を付ける必要があります。
  • 青色申告を行う場合には、青色申告承認申請書を一定の期限までに提出する必要があります。
  • 不動産管理の手間が必要です。管理会社に依頼する場合には、代わりに手数料を取られます。
  • 売却時に、下記の「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」が受けれなくなります
  • 税務だけでなく、借地借家法についても注意が必要です。

実家の処分

相続した実家をマイホームとして利用する予定もなく、賃貸として活用することも考えていない場合には、実家の処分を考える必要があります。
相続した土地建物を売却する場合には、譲渡所得がかかる場合があります。しかし、亡くなられた方が住んでいた家で、一定の条件を満たすと「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」を使うことができ、最大で3,000万円までは税金がかからなくなります。
※2022年9月現在では、2023年12月31日までの時限的な特例となっております。

そのほか、相続税がかかっている場合で相続税の申告期限後3年以内に売却した場合には、「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」の適用を受ければ、その支払った相続税の一部を譲渡所得から控除することも可能です。
※上記の「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」との選択制です。

相続税や譲渡所得などの資産税は時限的な特例制度が多く存在し、併用可能なものや選択制のものなど複雑になっております。売却を予定している場合には、最大限特例を活用するためにも事前に専門の税理士などにご相談することをお勧めします。

2023年4月27日からは相続土地国庫帰属制度がスタートしますが、対象となる土地は更地であることなどの条件が付されており、また、審査費用や向こう10年分の管理費用を負担金として支払う必要があるため、可能であれば売却した方が得になると思います。

活用のポイント

  • 相続した土地建物の購入時の価格の分かるものは保管しておくと譲渡所得などが減る場合があります。
  • 「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」を使う場合には、すべての要件を満たしているかを確認してください。建築年月日や相続~売却までの間に利用されていないことなど多くの条件が付いています。
    ※2023年12月31日までの時限的な特例です(再度延長するかどうかは2022年9月現在では不明)
  • 「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」は、申告期限後3年以内に売却した場合に利用可能です。

まとめ

実家を誰が相続するかを事前に話し合っておき、その相続人がどういう風に使っていくかも決めておくと税務上でも有利になることが多くなります。また、相続税や譲渡所得などの資産税を専門とした税理士に早めに相談しておくことも節税につながります。